のぶちゃんのおおきなて (五章)


去年のクリスマスに、初めてのぶちゃんがさちの部屋に訪れてからとゆうもの
2人で一緒にカレンダーをめくってきた
このカレンダーは、去年の年末に2人で選んだんだ

週に2、3回のぶちゃんと過ごす時間は、さちの日常になっていた
しあわせな、日常


でも、出会った当初に聞いたことがある

ね、のぶちゃんには帰るおうちがあるんでしょ
待ってるひとが、いるんでしょ?


少し視線を落としたさちを、真っ直ぐ向き直して言った

うん。
うちに、おくさんと娘の智恵がいるよ。

ごめんな、さち
僕のこの世の中でいちばん大切なひとは、智恵なんだ
そして、大切にすべき、おくさん。

さちは、智恵の次に、いちばん大切
ごめんな


智恵ちゃんの次でも、いちばんなの?

そうだよ、智恵ちゃんの次だけど、いちばんだよ


そう言ってぎゅぅって抱きしめられた

さちも、智恵ちゃんがだいすきだよ
会ったこともないのぶちゃんの一番大好きなひとが、さちも大好きになった


そしてそれ以来、こんなことを口にすることはなくなった
好きだから、一緒にいたい

だから。





また冬が来た


さちは空になったティーカップをもてあそんでいた

のぶちゃんはカップを持ったまま、テレビの野球中継に熱中している
カップの中に残る僅かなお茶は忘れ去られているみたい
何気ないこんな時間が、家族みたいでちょっとうれしい

もうすぐ時計の針は12時を差そうとしている
淋しさを打ち消すように口を開いた


もうすぐ、のぶちゃんと出会って1年だね


のぶちゃんはテレビから目をそらすことなく言った


どこか行きたいところ、ある?

ううん、別にないよ。のぶちゃんと一緒ならいい


それでものぶちゃんはいろいろ作戦を練っていたらしく

1年前に会ったあの場所で、6時に待ち合わせよう、
そう言ってカップを置いた


じゃね、また明日、

うん、




ばたん




いた、

いたい


胸のいたいところを押さえて蹲った
この音がキライだ


息が出来ないよ、のぶちゃん



このドアの音を聞くのが、苦しいよ



***

2人の一周年記念は、中華街へゴハンを食べに行って
横浜の夜景を見に行った

どこもクリスマス前でイルミネーションがきれい
公園を歩いていたら海風が冷たく、のぶちゃんにぎゅうってしがみついた

さむい、さむいよ

ぎゅぅぅぅぅ…


ダメだよ、さちの髪のにおいがすると
むらむらしてくるよ

わざとのぶちゃんに密着すると、のぶちゃんは少し挑戦的な目つきをした
そしてさちを建物の陰に連れていき
さちの首筋に唇を付けた


ぅぁぁぁぁぁ…


さちを後ろから抱え込み、口元を左手で押さえつけた
右手はスカートの裾を捲り上げ
その指は下着の中に滑り込み、何の前触れもないままさちの中に入ってきた


んんんんん…!!

押さえつけられた指の隙間から声が漏れる
のぶちゃんの左手に力がこもった


のぶちゃんの指がさちの中で荒々しく動く
まるで魔術師のようにその指は、さちの中をぐちゃぐちゃにしてゆく

遠くで夜景が霞んで見えた
まるで、知らないひとにむりやりされているみたいなのに…


ん、ん、ん、ん!!

さちの両手はのぶちゃんの左腕にしがみつき
全体重をのぶちゃんに預け切ったまま、
全神経はのぶちゃんの指が動くところに集中していた


ひとつだった指が、ふたつになった
意識は既に現実ではないところにいた

だしたり、いれたり
かとおもうと奥でうごく

さちの意思とは関係なくその場所が痙攣する


もっとして、

ひどいこと、もっとして


さちのからだもきもちいいも、全てのぶちゃんに委ね切っていた


ん、ん!!!!  ぶ、ちゃ、 の、ぶちゃ…!!!!



…いいよ、


そう囁くと、奥のほうで更に激しく指が動いた
さちは下唇を噛み締め、のぶちゃんの腕に強く爪を立てた



のぶちゃんの指の動きが止まる
さちのことが、何でも分かるんだ。この指は…

あたまのなかがぼぉっとして、冷たいアスファルトの上にへたり込んだ
のぶちゃんはそんなさちをちょっとほったらかして、タバコに火を付けた


夜の海、キレイだね

まるで何事もなかったかのような顔で、タバコの煙を吐きながら夜景を眺めるのぶちゃん
すごく大人のひとのように見えた

タバコを吸い終えると、さちを抱き起こし、いっぱい、いっぱいをキスしてきた
だいすき、のキス
タバコのにおい。のぶちゃんのにおい


行こうか、



…待って、、


あのね、
まだね、

ここがね、


おくのほうがね、
すごくじんじんしててね、

なんかね、

ヘンなの


さっき、気持ちいいがちゃんと終わったのに
なんだかね、

のぶちゃんの、おおきいの、
ほしいの


すごく、ほしいの




言葉にならない身体の欲求を
一生懸命伝えた

のぶちゃんがキスしてきた

いつもの、大好きだよ、って言うキスじゃなくて
すごく、いやらしいキス

のぶちゃんの唇がぬるぬると、さちの唇のうえを動く


のぶちゃん…!!

ガマン出来ないよぉぉ…!!


のぶちゃんにしがみ付くと、のぶちゃんは唇を離して言った


帰るよ



2人はもつれこむようにタクシーに乗り込んだ
まだまだ、電車が動いている時間なのに

2人だけの空間の中に、ずっといたかった

タクシーの中でものぶちゃんは
さちの首筋とか肩をずっと撫でていた

さちはのぶちゃんにしがみついたまま
身体の中のじんじんは、ぜんぜんおさまってくれなかった


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