Price (前編)



見ず知らずの男の目の前で裸になることは、以外と何でもないものだなと思った

かつて、愛した男との初めて身体を重ねた時は
灯りを全て落とした部屋の中でさえ、最後の下着を外されることが恥かしくて身を固くしたものだ




『初めまして。ヒカルと申します』


部屋に入って幾つか挨拶を交わした後、彼女はバスルームに向った
41℃に調整して更に掌で熱さを確認すると、レバーをMAXまで捻った
勢い良くお湯が迸る様を見て、この分だとバスタブ一杯になるにはそう時間は掛からないだろうと思った



ベッドルームに戻ると、"高杉"と名乗った男はネクタイに手を掛けようとしていた所だった
彼女は笑みを浮かべると彼の手を優しく解き、代わりに自らの手をネクタイに掛ける
するすると器用にネクタイが解かれる


『新人だって聞いていたけど慣れたものだね。他の店でも働いてたの?』
『いいえ。ここが、今日が初めてなんです。こういったお仕事をするのは』
『へぇ…』

『至らない事だらけだと思うんですけど・・・
何にも分からないので、どうしたら良いか教えてください』

『彼氏とセックスするような、そんな感じでいいよ』


ワイシャツのボタンを全て外し終わった時、高杉と目が合った
少し照れてはにかみながら


『あの・・・
今だけ、この時間だけ、

高杉さんを私の恋人だと思っていいですか?』


男はふわっと笑って、嬉しいよ、と言うと
額に軽く口付けた
彼女は更に照れて俯いた



高杉の身につけていたものを全て脱がし終え、ワイシャツとネクタイ、背広をクローゼットに仕舞うと
一瞬躊躇した後、自らのシャツのボタンに手を掛けた


『僕が脱がしてもいいかな』


高杉は"このような"経験はきっと初めてではないのだろう
緊張感や戸惑いを見せることなく彼女を裸にしていった

ブラを外し、彼女の乳房を目にした高杉が小さく感嘆の声を漏らした
そして面白いようにみるみると彼自身がそそり勃つ
高杉は彼女の腰に手を廻すと、堪らないとでも言うように乳房の先端を口に含んだ

『高杉さん、お風呂が先ですよ』

彼女が優しく促すと彼はそうだな、と苦笑いした



バスルームにて教えられた一通りの事、消毒用のうがいなどを済ませると
シャワーで彼の身体を温める

失礼します、そう言って両手でたっぷりと泡立てたソープで彼の身体を清め始める
彼女は身体洗い用のスポンジは使わず掌と指を使った


『バンザイしてください。わきの下もキレイにしますね』
『足の指の間ももちゃんと洗いましょうね』


『くすぐったいよ』
『綺麗になるまでガマンしてくださーい』
『くすぐったいったら、』


紳士的で大人の男に見えていた彼の表情も柔らかくなり
目じりに皺を寄せ男の子のように笑った
そんな笑い声に、彼女の気持ちも解(ほど)かれてゆく

男の身体の上に指をなめらかに滑らせると
もう既に男のソレは今すぐに触れられることを待ち望んでいるように天を仰いでいた


膝から内腿、内腿から彼自身に指を滑らせた時、彼は僅かに声を上げた

もう既に、射精間近のそれであるかのように固い
絡ませた5本の指を離すことなく、彼の背後に廻り
ソープがふんだんに付いた全身を彼の背中に密着させた

右の五本の指は彼自身の上を滑らせ、左の五本の指は胸に滑る
彼自身を擦(こす)りあげる度、じゅぼっ、じゅぼっとソープの泡立つ音がする
その動きに合わせて密着させた全身、乳房やアソコをぬるぬるぬるぬると擦りつけた
男が吐息を漏らす


『この仕事、初めてなんて嘘だよね・・・』



本当に彼女はこの仕事が初めてで、ましてやこの仕事を始めるにあたって
巷の噂で聞くような、男性スタッフによる"研修"を受けた訳でもない
今まで交わってきた男達と、こんなことをすれば相手が悦んでくれるものだと学習した、
性経験は年相応に重ねてきた、それだけのことだ


ソープが絡んだ指を柔らかく上下する度、彼の表情から笑みは消え
シャワーの流水音だけが響き渡る

上質のネクタイを締めていた男も
裸で抱き合い局所を愛撫される様は、性の快楽に溺れるただ一人のオトコに過ぎなかった

むしろ、それは初めて性の快楽を知った少年のような横顔にも見えた
苦しげに吐き出される吐息が声色へと変わってゆく



『左手は・・・・・
ココを触ってくれるかな・・・』


高杉は彼女の左手を、既に右の手に包まれ固くなったモノの少し下へ導いた
その五本の指はそれを柔らかく包み込むと、子猫の喉元を摩ってやるように優しく撫で上げた
右手の指の愛撫を止めることはなく


『はぁぁ・・・・ヒカルちゃん、イイ、
気持ちいいよ・・・・・』


更にソープを掌に落とすと、それをたっぷりと絡ませ優しく指を上下させる
既に男の感覚の全ては巻きつけられた細い指の中にあり
刹那の快楽を彼女の手中に委ね、時折切なげな声を上げた



はぁっ・・・

はぁ


ああ・・・・・



泡にまみれそそり勃つソレはもう、ここで終了時間を告げられたとしても
この淫らな指の動きを止めることは許さないだろう


そして一層固くなり、左手の五本の指で撫で上げられるモノはきゅっと緊張したように引き締まっている
優しいタッチで包んでいた指を、激しく擦り上げる
じゅぼっ、じゅぼっとソープが泡立つ

男が上擦った声を上げた


『もっと、
もっと強く擦って、』



泡まみれの親指と中指にもう僅かに力を込め擦り上げると
更にそれは怒張した

ああ、きっともう直ぐ出ちゃう

そう直感して撫で上げる左手の指先の動きにも激しさを増した
そして密着してソープでぬるぬるになったアソコを擦りつける

それはもう、本能のままに

彼女のソコにもじんじんとした快楽が走る



じゅぼっじゅぼっ、じゅぼっ、
じゅぼっ、

じゅぼっじゅぼっ、




ああっ



ヒカルちゃん、
ヒカルちゃん、



高杉が彼女の名前をうわ言のように呼んだその時

僅かに開かれた両足が指の動きに合わせてビク、ビクッと痙攣し
それと同時に、白い液体が空に弧を描いて放たれた

一度大きな射精をすると続けて2回、放出された


その様を目の当たりにして
彼女の脳みそも瞬間真っ白になり

あああ、

小さく感嘆の声を上げた




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